歌の意味解釈 66〜70番

66 もろともにあはれとも思へ山桜 花よりほかに知る人もなし    大僧正行尊
67 春の夜の夢ばかりなる手枕に かひなく立たむ名こそ惜しけれ   周防内侍
68 心にもあらでうき世にながらへば 恋しかるべき夜半の月かな   三条院
69 嵐吹く三室の山のもみぢ葉は 龍田の川の錦なりけり       能因法師
70 さびしさに宿を立ち出でてながむれば いづくも同じ秋の夕暮   良暹法師




■66 大僧正行尊(だいそうじょうぎょうそん、1055〜1135)
三条天皇のひ孫。参議 源基平(ミナモトノモトヒラ)の子。
12才で三井寺に入る。後に天台座主大僧正となる。

もろともにあはれとも思へ山桜 花よりほかに知る人もなし

山桜よ、私がお前をしみじみといとおしく思うように、
お前もまた私を同じようにいとおしく思っておくれ。
この山奥では、山桜よ、お前の他に私の心を知ってくれる友も居ないのだから。

歌の背景:大峰山にて思いがけず桜の花を見て詠んだ歌。
大峰山…奈良県吉野郡十津川の東にある。修験道の霊場。
修験道は、奈良時代に役小角(エンノオヅノ)を開祖とする仏教の一派で、
山中で修行を積み霊験を積むことを業(ワザ)とする。
三井寺周辺地図三井寺



■67 周防内侍(すおうのないし、11世紀後半)
周防守平棟仲(スオウノカミタイラノムネナカ)の娘?。
70代 御冷泉以下四代の宮廷に仕え、当時の多数の歌合に参加。

春の夜の夢ばかりなる手枕に かひなく立たむ名こそ惜しけれ

短い春の夜の夢のように、はかないつかの間の腕枕を借りたばかりに、
二人が恋人だというつまらない噂が立ったりしたら、口惜しいたらしりゃしませんわ。

歌の背景: 陰暦二月頃の月の明るい夜、二条院(中宮の彰子内親王の御簾)で、
夜通し物語などをしていた時、周防内侍と大納言藤原忠家との間で交わされた次のやりとり。
内侍…「枕が欲しいものです」。
忠家…「これを枕に」と御簾の下から’かひな(腕)’を差し入れた。
内侍…「かひなく」(つまらなく)と、とっさに詩に詠み込んだ。
忠家の遊び心か本心からかは不明とのこと。
当意即妙の既知と「春・夜・夢・手枕」などの甘美な言葉を連ねて優艶な恋の情調を漂わせる。



■68 三条院(さんじょういん、976〜1017、67代天皇 在位 1011〜1016)
冷泉天皇の第二皇子。
在位五年で譲位。翌年に没。歴代天皇一覧

心にもあらでうき世にながらへば 恋しかるべき夜半の月かな

天皇の位を退き、その後も自分の本心に反して辛いこの世を生きながらえてしまったならば、
きっと恋しく思われるだろう。天皇として見ている今夜のこの美しい月を。

三条院が天皇を退く決意をして詠んだ歌。
叔父の藤原道長が権力を握っていたため、皇太子になってから25年間も天皇になれず、
即位して後も道長の圧力のため、わずか5年で退く。
三条院の無念の人生と月の美しさのバランスがこの歌の魅力。



■69 能因法師(のういんほうし、988〜?)
橘永ト(タチバナノナガヤス)。
歌を歌う際、歌枕に強い関心を持っていた。
漂泊・流離い(サスライ)の歌人。

嵐吹く三室の山のもみぢ葉は 龍田の川の錦なりけり

嵐が吹き散らす三室の山のもみじの葉が、
麓を流れる龍田川の川面を埋めつくしている。
まるで錦のように豪華で美しい情景だなぁ〜。

龍田川の紅葉:竜田川の紅葉や、その紅葉を浮かべて流れる竜田川の光景は
万葉の時代からよく読み込まれている。
平安時代にも、「龍田と言えば紅葉」と言うイメージが固定していた。
三室の山…奈良県生駒郡斑鳩町の神南備山。紅葉の名所。
「みむろ」は神が降臨して宿る所を意味する。
竜田川…三室の山の東の麓を流れる川。大和川の支流。
大和川…奈良県および大阪府を流れ大阪湾に注ぐ、一級水系の本流。(河口は大阪市の南端)



■70 良暹法師(りょうぜんほうし、11世紀前半)
平安時代、比叡山延暦寺の僧。

さびしさに宿を立ち出でてながむれば いづくも同じ秋の夕暮

寂しさに堪えかねて庵の外に出てみると、
あぁ、どこも同じように、寂しい秋の夕暮れだなぁ〜。

良暹法師は京都洛北の大原に隠棲していたらしい。この歌は大原で詠まれた歌?
この歌の「宿」…良暹法師が住んでいる草庵。
「庵」と「宿」…
「庵」(イオ、イオリ)は質素な家。 
「宿」は人が住む所、家。
posted by 百人一首散策人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小倉百人一首 意味・解釈 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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