歌の意味解釈 81〜85番

81 ほととぎす鳴きつる方をながむれば ただ有明の月ぞ残れる      後徳大寺左大臣
82 思ひわびさても命はあるものを 憂きにたへぬは涙なりけり      道因法師
83 世の中よ道こそなけれ思ひ入る 山の奥にも鹿ぞ鳴くなる       皇太后宮大夫俊成
84 ながらへばまたこのごろやしのばれむ 憂しと見し世ぞいまは恋しき  藤原清輔朝臣
85 夜もすがらもの思ふころは明けやらで 閨のひまさへつれなかりけり  俊恵法師




■81 後徳大寺左大臣(ごとくだいじのさだいじん、1139〜1191)
藤原実定(サネサダ)。右大臣藤原公能(キンヨシ)の子。定家の従兄弟。
管弦や 今様 にも優れる。

ほととぎす鳴きつる方をながむれば ただ有明の月ぞ残れる

ホトトギスが鳴いたので、その声の方に目をやると、もうその姿は無かった。
ただ、夜明けの空に有明の月が残っているだけだった〜。

ほととぎす…鳴き方は「テッペンカケタカ」と表現される。
「ほととぎすの声が、明け方の空にうっすらと残る月と共にまだ漂っている」、
この歌は、そんな美しい、初夏の朝の一瞬を捉えている。



■82 道因法師(どういんほうし、1090〜1182?)
俗名藤原敦頼(アツヨリ)。
歌道への執着が強く、逸話も多い。90才で歌合に参加したとも言われる。

思ひわびさても命はあるものを 憂きにたへぬは涙なりけり

つれない恋人のことでいくら悩んだと言っても、
それで死ぬこともなく、私はこうして生きながらえている。
それでも辛さに堪えきれず、ついつい涙がこぼれてしまうのですよ〜。

自らの意思や理性では制御できない恋心を、「命」と「涙」とを対比させて詠んだ歌。
思ひわび…「思ひわぶ」と言う動詞は、恋歌の多く用いられる心情語のひとつ。
自分につれない相手ゆえに思い悩む気持ちを表す。
「わび」仲間…「わぶぬれば〜」(20番)、「恨みわび〜」(65番)。



■83 皇太后宮大夫俊成(こうたいごうぐうのだいぶとしなり、1114〜1204)
藤原俊成。俊成は、しゅんぜい、とも言う。藤原定家の父。
余情・幽玄をを唱える。勅撰集『千載集』の撰者。歌学書に『古来風体抄』がある。

世の中よ道こそなけれ思ひ入る 山の奥にも鹿ぞ鳴くなる

この世の中には、辛さから逃れる道など無いものだ。
ああ〜、いちずに思いつめて入った山の奥にも、悲しげに鳴く鹿の声が聞こえる。

奥山の静けさ…人里離れた奥深い山中は、仏道修行に相応しく、孤独な静けさをたたえている。
そうした所で鳴く鹿の声は、聞く者の心をいっそう孤独にさせる。
鹿の声で動かされた心情を歌ってる作として他に、猿丸太夫の歌がある(5番)。



■84 藤原清輔朝臣(ふじわらのきよすけあそん、1104〜1177)
藤原顕輔(79番)の子。歌学に優れ、当時の歌壇の第一人者となる。
歌学書に『袋草子』がある。

ながらへばまたこのごろやしのばれむ 憂しと見し世ぞいまは恋しき

この先、生きながらえるなら、
辛いと感じているこの頃のこともまた、懐かしく思い出されることだろう。
辛いと思って過ごした昔の日々も、今では恋しく思われることだから〜。

清輔は、顕輔15歳の時の子。その為かどうか、父からは愛されず疎まれ、親子は不和だったという。
この歌は、悩み続けた父との関係を背景に、清輔36才頃、詠んだとされる。
清輔の切々たる感慨が行間に滲む。
父との関係では愛情薄い青春時代を送ったが、その父との相克を通して六条家を継ぐことになる。
父への対抗心が父をしのぐバネとなり清輔を支えたのかも知れない。



■85 俊恵法師(しゅんえほうし、1113〜1191)
源俊頼(74番)の子。 鴨長明 の和歌の師。
自宅の歌林苑で、歌合、歌会、を毎月開催する。

夜もすがらもの思ふころは明けやらで 閨のひまさへつれなかりけり

ひと晩中、訪ねてこない恋人のことを思っていると、時がたつのが遅いものだ。
寝室の戸の隙間からは、なかなか朝日が差し込まず、その隙間にさえ薄情に思えてきます…。

「恋人が来てくれないので、寝室の戸の隙間に八つ当たり?」この歌は、そういう感じの歌。
早くこの辛い時間が過ぎて朝になって欲しい。
すがる思いで戸の隙間からの朝のひかりを待つ切ない心。
作者が女性の立場になって恋を詠んだ「歌合」の時の歌。


posted by 百人一首散策人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小倉百人一首 意味・解釈 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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