歌の意味解釈 61〜65番

61 いにしへの奈良の都の八重桜 けふ九重ににほひぬるかな     伊勢大輔
62 夜をこめて鳥の空音ははかるとも よに逢坂の関はゆるさじ    清少納言
63 今はただ思ひ絶えなむとばかりを 人づてならでいふよしもがな  左京大夫道雅
64 朝ぼらけ宇治の川霧たえだえに あらはれわたる瀬々の網代木   権中納言定頼
65 恨みわびほさぬ袖だにあるものを 恋にくちなむ名こそ惜しけれ  相模


56番 和泉式部 〜 62番 清少納言まで、
66代 一条天皇 の「皇后 藤原定子」&「中宮 藤原彰子」に使えた女官が続きます。
定子は、藤原道隆の長女。(道隆は、藤原兼家の長男)  62.清少納言のみ
彰子は、藤原道長の長女。(道長は、藤原兼家の五男)  56.和泉式部〜61.伊勢大輔まで


■61 伊勢大輔(いせのたいふ、11世紀前半の人)
伊勢の祭主 大中臣輔親(スケチカ)の娘。大中臣能臣(49番)の孫。
紫式部、和泉式部らとともに、66代 一条天皇の中宮 彰子に女房として仕えた。

いにしへの奈良の都の八重桜 けふ九重ににほひぬるかな

昔の 奈良の都 の八重桜が、
今日は 京の都の宮中で ひときわ美しく咲き誇っていますねぇ〜。(あぁ美しい。あぁ立派。)

八重桜…山桜の変種。花が大きく花弁が重なり合っている。
他の桜よりやや遅れて開花する。平安時代ごろ八重桜は京都では余り多くなかった。
九重…宮中のこと。 対語…いにしへ⇔けふ、奈良⇔京都、八重⇔九重
  


■62 清少納言(せいしょうなごん、966?〜1027?)
『枕草子』の作者。清原元輔(42番)の娘。清原深養父(36番)のひ孫。
66代 一条天皇皇后 定子に女房として仕えた。 
(和泉式部、紫式部、大弐三位、赤染衛門、小式部内侍、伊勢大輔 は 一条天皇の中宮 彰子に仕えた)

夜をこめて鳥の空音ははかるとも よに逢坂の関はゆるさじ

夜の明けないうちに鶏の鳴き真似で人を騙そうとしても そうはいきませんからね。
あの函谷関ならば いざ知らず この逢坂の関は許しませんよ。
騙そうとしても 私は決して逢いはしませんから ねぇ〜だっ。

函谷関…紀元前の中国の関所。
斉の国の孟嘗君らは兵に追われ、夜中に関所 函谷関に着く。
関所の門は夜明けまで開けない決まり。
だが、一行の一人が鶏の鳴き真似をする。
すると、門番が夜明けと間違え門を開け、孟嘗君らは無事逃げる。
中国の故事『史記』。



■63 左京大夫道雅(さきょうのだいふみちまさ、993〜1054)
藤原道雅。藤原伊周(コレチカ)の子。関白 藤原道隆の孫。

今はただ思ひ絶えなむとばかりを 人づてならでいふよしもがな

今となっては ただもう諦めました と言うことを
せめて人づてではなく じかにお目に掛かってお話しする手だてが あって欲しいのですが…。

歌の背景…伊勢神宮に仕える斉宮だった女性との交際を背景にした歌。
斉宮は神に仕える未婚の皇女。男性との交際を厳しく禁じられていた。



■64 権中納言定頼(ごんちゅうなごさだより、995〜1045)
藤原定頼。大納言公任(55番)の子。書にも優れる。
「大江山〜」(60番)は、定頼が小式部内侍をからかって、彼女がやり返した歌。

朝ぼらけ宇治の川霧たえだえに あらはれわたる瀬々の網代木

明け方 あたりがほのぼのと明るくなる頃
宇治川の川面に立ちこめていた霧がとぎれとぎれになった。
嗚呼、その絶え間のあちらこちらから点々と現れてきた川瀬川瀬の網代木よ〜。

典型的な情景歌。平安時代後期、宇治川の霧を詠んだ歌が増える。これは『源氏物語』の影響。
宇治川…京都府宇治市あたりを流れる川。霧が多い。また、宇治には貴族の別荘が多くあった。
網代…魚を捕るため竹などで編んだ仕掛け。網代木はそれを支える杭。



■65 相模(さがみ、11世紀半ばの人)
相模守大江公資(サガミノカミオオエノキンスケ)の妻。
修子内親王家に出仕。宮廷で活躍した女性歌人。

恨みわびほさぬ袖だにあるものを 恋にくちなむ名こそ惜しけれ

恨んで恨んで恨んだ末に もう恨む気力も無くしたわ。
流す涙で乾く間も無いほどに濡れる袖さえ 惜しいくらい。
ましてこの恋のため 世間に浮目を流し私の評判が落ちてしまうなんて 口惜しいたらありゃしない。

恨みわび…恨む気力を失って。
「〜わぶ」は動詞の連用形について、その行為を し通す気力を失う意味を表す。
恋に朽ちなむ…この恋ゆえに世間に浮名を流して朽ちてしまうだろう。
「な」は、完了の助動詞「ぬ」の未然形。
「む」は、推量の助動詞「む」の連体形で、続く「名」にかかる。


posted by 百人一首散策人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小倉百人一首 意味・解釈 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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