歌の意味解釈 01〜05番

01 秋の田のかりほの庵の苫をあらみ わが衣手は露にぬれつつ     天智天皇
02 春すぎて夏来にけらし白妙の 衣ほすてふ天の香具山        持統天皇
03 あしひきの山鳥の尾のしだり尾の ながながし夜をひとりかも寝む  柿本人麻呂
04 田子の浦にうち出でてみれば白妙の 富士の高嶺に雪は降りつつ   山部赤人
05 奥山に紅葉ふみわけ鳴く鹿の 声きくときぞ秋はかなしき      猿丸太夫




■01 天智天皇(てんじてんのう、626〜671、38代天皇 在位 661〜671)
中大兄皇子。「大化の改新」の中心人物。 ( 歴代天皇一覧
一般に「中大兄皇子」として知られるが、正しくは葛城皇子。
「大兄」とは皇太子の意で、「中大兄」は「次の皇太子」を意味する。

秋の田のかりほの庵の苫をあらみ わが衣手は露にぬれつつ

秋。田んぼのほとりにある仮小屋。その屋根を葺いた苫の編み目が粗いので、
私の衣の袖は、露に濡れていくばかりです。

百人一首の第1首は、日本の秋、黄金色に実った田んぼの風景から始まる。
天皇が稲の見張りをするわけはないので、
農民の立場になって、その労働の厳しさを思いやった歌?
実った稲、秋の冷気と夜露、といった日本の風景の原点のひとつがイメージされる。
定家は、日本の繁栄と和歌の原点がこの歌にあると考え第1首に置いた?
しかし、「田んぼ」自体を示す「田」の字があるのは、この歌と71番「夕されば〜」。
恋の歌集に、田んぼは そんなには必要ないと言うことでしょうか〜…



■02 持統天皇(じとうてんのう、645〜702、41代天皇 在位 686〜697)
38代 天智天皇の皇女。
40代 天武天皇の皇后。 そして、父崩御の15年後、3代目に女帝(4人目の女帝)として、
41代 持統天皇 となる。 ( 歴代天皇一覧

春すぎて夏来にけらし白妙の 衣ほすてふ天の香具山

春が過ぎて夏が来てしまっているらしい。
夏になると真っ白な衣を干すという香具山なのだから。

白と緑が目に鮮やかな初夏の到来を歌った歌。 藤原京から香具山を遠望しての歌。
「てふ」… 〜と言う。 ⇒ 夏に衣を干す習わしがある’と言う’天の香具山なのだから〜
香具山…奈良県橿原市の山。大和三山(香具山・畝傍山・耳成山)の一つ。 
天上から降りてきたという神話的伝説から「天の」を冠する(枕詞)。
持統天皇の居た藤原京から見て、香具山は東南の方向にある。



■03 柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ、7世紀後半〜8世紀初頭)
万葉時代の最大の歌人。下級官人であったらしい。詳細は不明。

あしひきの山鳥の尾のしだり尾の ながながし夜をひとりかも寝む

山鳥の尾の、その垂れ下がった尾の長々しさのように、秋の長々しい夜を、
独りで寝るのだろうか…。 嗚呼、寂しいなぁ〜。

山鳥…キジ科の鳥。昼は雄雌一緒にいるが、夜は谷を隔てて別々に寝るとされていた。
そのため、独り寝の悲哀をあらわす歌の言葉となった。 
しだり尾…長く垂れ下がっている尾。尾が長いのはオス。
これも、男が「独り寝の悲哀をかみしめているおもむき」を醸し出している。



■04 山部赤人(やまべのあかひと、8世紀半ば)
『万葉集』第三期の代表的歌人。宮廷に仕えた人。

田子の浦にうち出でてみれば白妙の 富士の高嶺に雪は降りつつ

田子の浦に出て眺めてみると、
真っ白な富士の高嶺に、まさに今、雪が降っている。 おぉ〜絶景だぁ〜。

田子の浦…静岡県の駿河湾にそそぐ富士川河口付近の海岸。
当時、駿河湾の西部一帯をさし、歌枕とされた。 
背景…実際には、山頂に降っている雪は見えない。
しかし、見えている風景に対して ’想像力’ を働かせた歌。
百人一首の楽しみ ⇒ 三十一文字で、想像力を働かせる・イメージを膨らませる。



■05 猿丸太夫(さるまるたゆう、8世紀〜9世紀 ?)
伝説的歌人。詳細不明。

奥山に紅葉ふみわけ鳴く鹿の 声きくときぞ秋はかなしき

人里離れた奥山で、散り敷かれたような紅葉を踏み分け鳴いている雄鹿。
その雄鹿(牡鹿)の声を聞くと、いよいよ秋はしみじみと物悲しく感じられますなぁ〜。

紅葉踏み分け…主語は牡鹿。晩秋の風景。鹿は古の日本人が多いに親しんできた動物。
背景…牡鹿が牝鹿を求め鳴く声の物悲しさは古の人にとって秋の季節を代表するもの。
牡鹿の鳴き声が「哀しく聞こえる」のは歌人自身が寂しく哀しいからかも知れない。
posted by 百人一首散策人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小倉百人一首 意味・解釈 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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